
定期的に読み返したい。経営の原理原則が学べる名著「マネジメント」
※この記事は2018年7月20日に投稿されたものです。
ピクスタのブレーンである経営陣やリーダーたちが影響を受けた本を紹介するコーナー。今回、紹介するのは、代表取締役社長 古俣よりこの一冊です。
古俣 大介 (Daisuke Komata)
ピクスタ株式会社 代表取締役社長
1976年9月生まれ。
多摩大学在学中に、コーヒー豆のEC販売、女性向け古着販売を開始。その後大学4年次に株式会社ガイアックスにインターン入社。正社員入社後、営業マネージャーとして2つの新規事業部を立ち上げた後、2000年9月に子会社の立ち上げに参画、取締役に就任。
2002年1月有限会社万来を設立し、飲食店舗向け販促デザイン事業を開始。2003年3月に撤退し、美容健康グッズのEC事業を開始。2005年8月にオンボード(現 ピクスタ株式会社)を設立。2013年11月にPIXTA ASIA PTE.LTD.Director就任、2016年5月にPIXTA VIETNAM CO.,LTD.会長就任、同年12月にPIXTA(THAILAND)Co.,LTD.Director就任、2017年3月にTopic Images Inc.理事就任。
どんな本か
知の巨人と言われるドラッカーの代表的著作。
現代にも通じる経営の様々な原理原則が散りばめられています。私もすでに節目ごとに4〜5回読み直していますが、経営者としてのステージごとに多くの学びを得ることができます。経営の原理原則を、ときには本質的に、ときには実用的に、ときには哲学的な表現で多くの示唆を与えてくれる名著です。
所感
この本の大元の著作は、40年以上前に書かれたものです。それだけでも驚きですが、ここに書かれている原理原則は、いまだ色あせることなく、むしろ知識社会、情報社会への移行が進む現代にはさらに輝きを増していると感じます。
40年以上前にこれらの原理原則を打ち立てたドラッカーの洞察力には感銘を受けざるを得ません。
さて、長く経営をしていると、いろいろな迷いが出ることが少なくありません。様々なステークホルダーが増えてくる中で、大小無数の意思決定をしていかねばなりません。中にはいくら考えても正解がわからない、という問題にもぶち当たります。
そこで大事になるのは、経営者として、組織として、企業として何を大事にするのか、という基本となる考え方です。
そんなときに、ドラッカーは数多くの事例と、膨大な知見を踏まえ、多大な示唆をこの本の中で与えてくれます。ベースとなる考え方への影響はもちろん、これまでも幾度となく迷いが出たときに、ドラッカーの言葉は常に正しい道のりを照らし、そのたびに自分を救ってくれました。
企業の目的とは
この本の中で、僕が最も好きで、最も核心と思えるパートがいきなり最初に登場します。「企業とは何か」「企業の目的とは」という問いです。
ドラッカーはこう言っています。
企業の目的は、それぞれの企業の外にある。企業は社会の機関であり、その目的は社会にある。企業の目的の定義は一つしかない。それは、顧客を創造することである。
企業の目的とは、売上でも利益でもシェアでもなく、「顧客を創造することである」とドラッカーは言っているのです。市場をつくるのは企業であり、潜在欲求を有効需要に変える、または欲求を創造して初めて市場と顧客が誕生するのだと。
企業とは何かを決めるのは顧客である。なぜなら顧客だけが、財やサービスに対する支払いの意志を持ち、経済資源を富に、モノを財貨に変えるからである。しかも顧客が価値を認め購入するものは財やサービスそのものではない。財やサービスが提供するもの、すなわち効用である。
企業の目的と使命を定義するとき、出発点は1つしかない。顧客である。顧客によって事業は定義される。事業は、社名や定款や設立趣意書によってではなく、顧客が財やサービスを購入することにより満足させようとする欲求によって定義される。顧客を満足させることこそ、企業の使命であり目的である。したがって、「われわれの事業は何か」との問いは、企業を外部すなわち顧客と市場の観点から見て、初めて答えることができる。
ぱっと読むと当たり前に思えるかもしれません。しかし、この核心をついたシンプルな原理原則により、自分たちは自分たちの外側にいる顧客(ユーザー)に価値を提供し、顧客を創造するために存在するのだ、という原点に立ち返らせてくれるのです。
より大きなリスクを負担できるようにする
また、不確実性の高い新たな挑戦をするときには、どうしても臆してしまうものです。ここでもドラッカーは、リスクを取ることの意味について、明快かつ論理的な言葉で後押しをしてくれます。
経済活動とは、現在の資源を未来に、すなわち不確実な期待に賭けることである。経済活動の本質とは、リスクを冒すことである。リスクを皆無にすることは不毛である。最小にすることも疑問である。得るべき成果と比較して冒すべきリスクというものが必ずある。戦略計画に成功するということは、より大きなリスクを負担できるようにすることである。より大きなリスクを負担できるようにすることこそ、起業家としての成果を向上させる唯一の方法だからである。
成果とは打率である。人は、優れているほど多くの間違いをおかす。優れているほど新しいことを試みる。
成長自体を目標にしない
スタートアップや新興上場企業であれば、成長し続けることは当然という認識があると思います。しかし何のために成長するのか、どのぐらいの成長を目指すべきなのか、という視点では誰も教えてくれず、「とにかく急成長を」と手段が目的化してしまうことも少なくありません。
しかし、ドラッカーはその点でも大きな示唆を与えてくれます。
成長そのものを目標にすることは間違いである。大きくなる事自体に価値はない。良い企業になることが正しい目標である。成長そのものは虚栄でしかない。しかしそれでも、成長は望ましい目標とされ続ける。それどころか、必要不可欠な目標とされ続ける。
したがって、いかに成長をマネジメントをするかを知っておかねばならない。第一に、必要とされる成長の最小点について検討しておく必要がある。生命を維持していけるだけの地位は確保しなければならない。第二に、成長の最適点について検討しておく必要がある。それ以上成長しようとすると、資源の生産性が犠牲になる点はどこか。収益性を高めようとすると、リスクが急激に増大する点はどこか。成長の最高点ではなく最適点こそ成長の上限としなければならない。成長は最適点以下でなければならない。
したがって企業の第二の機能は、イノベーションすなわち新しい満足を生みだすことである。経済的な財とサービスを供給するだけでなく、よりよく、より経済的な財とサービスを供給しなければならない。企業そのものは、より大きくなる必要はないが、常によりよくならなければならない。
ちなみに私達は売上やシェアよりも、まずは顧客(ユーザー)にとってベストなサービスになる、ということを最優先に置いています。
また利益というものに対しての位置づけも明快に示してくれています。
利益とは、原因ではなく結果である。マーケティング、イノベーション、生産性向上の結果手にするものである。したがって利益は、それ自体致命的に重要な経済的機能を果たす必要不可欠のものである。
1. 利益は成果の判定基準である。
2. 利益は不確定性というリスクに対する保険である。
3. 利益はよりよい労働環境を生むための原資である。
4. 利益は、医療、国防、教育、オペラなど社会的なサービスと満足をもたらす原資である。
組織についての金言
その他この本には、組織についても多くの学びがあります。しかしすべてを紹介するのは量が多すぎるので、特に印象深い言葉を抜き出し、要約してご紹介します。ただ短文ではすべてを理解できないので、ぜひ本を買って詳細まで読んでみてください。
組織の焦点は、成果に合わせなければならない。組織の焦点は、問題でなく機会に合わせなければならない。
組織の目的は、人の強みを生産に結びつけ、人の弱みを中和することにある。
配置、昇給、降級、解雇など人事に関わる意思決定は、組織の信条と価値観に沿って行わなければならない。
マネージャーに必要不可欠な根本的な資質、それは真摯さである。
上司と知識労働者の関係は、かつての上司と部下の関係ではなく、指揮者と楽器演奏者の関係に似ている。知識労働者を部下に持つ上司は、オーケストラの指揮者がチューバを演奏できないように、自ら部下の仕事を肩代わりすることができない。
動機づけ、特に知識労働者の動機づけは、ボランティアの動機づけと同じである。ボランティアは、まさに報酬を手にしないがゆえに、仕事そのものから満足を得なけれなならない。
またこの本に限らずですが、名著と言われる本は、定期的に読み返すことをおすすめします。そのときの自分のステージによって、得られる学びが違ってくるからです。
自分も大学時代から数年ごとにこの本を読み直し、そのたびに新たな気づきと視座の高さを得られ、この本の奥深さを思い知るのです。
(執筆:代表取締役社長 古俣大介/撮影:コンテンツ部 CPG 矢島聖也 )