採用担当者が新規事業立ち上げに挑戦した理由<後編>
PIXTAに新たに誕生した写真の撮り下ろしを請け負う「PIXTAオンデマンド」。
前編では、サービスを立ち上げた古川が、採用担当というコーポレートサイドから事業運営サイドへ大きなキャリアチェンジを果たすに至った想いと挑戦の軌跡を追いました。
後編ではようやく立ち上げたfotowa bizを「PIXTAオンデマンド」としてリスタートすることになった経緯と新たに始まった挑戦の日々、そして「PIXTAオンデマンド」にかける想いを掘り下げます。
PIXTAオンデマンドはfotowa bizの延長ではない
――fotowa bizが、PIXTA事業の派生サービス「PIXTAオンデマンド」としてリスタートすることが決まったのが、fotowa bizのローンチから約半年後。古川さんは、そのプロジェクトリーダーに抜擢されました。簡単に経緯を教えてください。
2019年夏に、PIXTA事業の派生サービスを前提にした新規事業のアイデアを募る社内公募がはじまりました。
企業成長を考えた時に、全くの新規事業を立ち上げるという方向性と、メイン事業であるPIXTAの強みやリソースを活かしながら事業の幅を広げられる派生サービスをつくるという方向の2つがあって、この時の社内公募は後者でした。
わたし自身はこの時、fotowa bizで手一杯でアイデアを出すどころではなかったので、派生サービスは何になるんだろうなってワクワクしてたんです(笑)。
そうこうしているうちにアイデアが出揃って、協議の結果、PIXTA事業部の派生サービスとして「写真の撮り下ろしサービスをつくろう」ということになり、全社への公表前日に「fotowa bizの経験を活かせると思うから、やってみないか」と声をかけられたのが経緯です。
「fotowa bizの延長ではなく、いちから撮影事業市場全体を見直して戦う領域を決めていきたい」という代表古俣の言葉も魅力的でした。
――機能やサイト構造など、細部の違いはありますが、一見するとPIXTAオンデマンドはfotowa bizと同じように見えます。fotowa bizを移植しただけ……ではないんでしょうか?
そうですね、現状だと大きな差異はないと思います。
でも、根本的な考え方や位置づけが異なります。
fotowa bizは、家族向け出張撮影「fotowa」のビジネス利用版を前提に、クライアント企業とフォトグラファーのマッチングをベースに立ち上げたサービスでした。一方、PIXTAオンデマンドはマッチングだけにとらわれず、PIXTAのユーザー基盤などの強みを活かすことを前提に「撮り下ろし撮影市場」を攻めていくにあたって、何からつくりどんなターゲットを取り込んで、今後どう広げていくのかを考えていきました。その結果、fotowa bizで対応していたところから着手するのが良いという判断のもと生まれたサービスです。
PIXTAオンデマンドは立ち上がったばかりなので、サービスを運営する中で方向性が変わることがあるかもしれませんが、現時点で考えるビジョンとしての将来像は「企業のあらゆる撮影需要に応えられるサービス」です。
現状のPIXTAオンデマンドは「クライアント企業とフォトグラファーのマッチング」でしかないので、撮影内容も小規模なものを前提に最低限の機能で設計していますが、大規模な撮影になればフォトグラファーとのマッチングだけでは成り立たなくなります。そこへいきなりチャレンジするよりも、fotowa bizの経験を活かし、サービスを育てながら、多様な撮影ニーズに応えられるように進化させていきたいという考えがあります。
今はまだ「スタートライン」に立っただけ
――つまり、今のPIXTAオンデマンドは、ほんの入口に過ぎないということなんですね。
はい。ここからが始まりです。
とはいえ、さまざまな撮影に対応できるようになるまでには、超えなければいけないたくさんの課題があります。
それに、現状ターゲットにしている小規模撮影の撮り下ろし需要に応えていくためにも、まだまだやらなければならないことがたくさんあります。
そういう意味でも、PIXTAオンデマンドは「やっとスタートラインに立った」という状態ですね。
――そのスタートラインに立つにあたって、PIXTAオンデマンドで一番のこだわったポイントはどこですか?
「検討に必要な情報が、いち早く手に入ること」です。
検討に必要な情報とは、適切なプランと、撮影可能なフォトグラファー情報です。 適切なプランは、撮影にかかる時間や料金、納品点数などのこと。撮影可能なフォトグラファー情報は、これまでの撮影経験や実績、作例などのことです。この2つが同時にいち早く手に入れば、クライアント企業は安心して依頼することができると考えました。
fotowa bizをやってみてわかったのは、特に初めて撮影を手配するクライアント企業は適切なプランを自分で選べないということです。撮ってほしい写真のイメージや、写真の使用用途は決まっているけれど、それを実現するために、何カット写真が必要なのか、撮影所要時間はどのくらいかかるのか、どんな撮影スキルや機材、環境が必要なのかわからないために、撮影プランを用意していても適切なものを選べなかったんですね。
だから、しっかりとヒアリングをしてプランを提案したり、一緒に決めていくことが多くありました。
クライアント企業が求めていることは、もちろん前提に写真のクオリティはあれど「自分たちにとってベストなプラン」なので、これが入手できないことには検討のテーブルに乗れません。
このため「自動見積り機能」にはこだわりました。撮影内容をポチポチと選択していくだけで、所要時間と料金がその場でわかるようにしています。
――となると、待たれるのはもうひとつの「フォトグラファー情報の即時入手」の部分ですね。
はい。すぐに最適なプランがわかるという部分を最優先にしてローンチさせましたが、本来なら「適切なプラン」と「フォトグラファー情報」は2つでひとつであるべきだと思います。それでも、ローンチを急いだのは、いち早くクライアントの声をききたかったからです。「適切なプランとフォトグラファー情報がセットで入手できることが最善である」というのは、経験則による仮説でしかありません。もしかしたら、セットである必要はない可能性もあります。fotowa bizのときよりも、フォトグラファー提案のスピードは改善されているので、それなら「理想の完成形」を待つよりも、早くサービスを開始して仮説検証を繰り返しながら柔軟に理想の完成形を目指す方が、最終的にユーザーにとって使いやすいサービスにできます。
なので、クライアントに必要だと考えている内容で、今実現できているのは「自動見積り機能」だけですが、ユーザーの動きや声を参考にしながら「フォトグラファー情報の提供」はもちろん、その先の工程の自動化も目指して、利便性を追求していきたいと思っています。
――古川さんの挑戦の日々は、まだまだ続く……ということですね。
はい! 毎日、必死です(笑)。
なにせ、どこにも正解がないので、仮説検証の繰り返しです。ローンチはゴールではなく、はじまり。数年後どうなっていたくて、そのために現状どうするのか。未来のために考慮しておくべきこともたくさんあるけれど、道標のない道を手探りで進んでいくしかありません。
幸い良いチームメンバーと一緒にスタートできたので、これからもみんなで力を合わせて、一歩一歩進んでいきたいと思います。
目指すのはPIXTAに来ればビジュアルのすべてがそろう存在
――では改めて、これからの展望や意気込みを教えてください。
まだまだPIXTAオンデマンドは発展途上です。実現したい理想形に至るまでの道のりも遠く、やりたいことも山積みですが、ピクスタが大事にしているユーザーファーストの精神や、鋭く素早く改善を繰り返すことを重ねてサービスを軌道に乗せ、画像素材も撮り下ろしも含めてPIXTAブランドとして「PIXTAに来ればクリエイティブ制作の上で必要なビジュアルはすべてそろう」という存在になりたいと思っています。
――最後に、未経験ながら果敢に新しい世界に飛び込んだ当時の自分に、今ならなんて声をかけてあげたいですか?
「終わらないワクワクが待っているよ!」ですかね。
すごく大変でしたし、今も必死ですけれど、ひとつのサービスを立ち上げるには様々なフェーズがあって、関わる人も必要な知識もどんどん増えて変わっていきます。そして事業が変われば環境も変わります。その分、対応していくのは大変でも、進むごとに見える景色が変わっていくし、面白さは増す一方です。「新しい世界が待っているから、やり抜け!」と励ましたいかな(笑)。
――ありがとうございます。これからのPIXTAオンデマンドの進化と古川さんの益々の活躍を楽しみにしています!
(聞き手/執筆:経営企画部 広報担当 小林順子 | 写真:戦略人事部 採用担当 鈴木瑞穂)