「ルール」だけでは育休はとれない~希望者全員が育休取得できる大事な要素とは~
東京都の調査によると、男性の育休取得率(令和5年度)は38.9%に増加。男性の育児休暇の取得も、だいぶ浸透してきました。一方で、SNSでは子育て世帯をサポートする社員の負担も話題に。
産休・育休の取得を単純に促進するだけでは、ひずみが生まれてしまうのかもしれません。
ピクスタは男女問わず、育休取得希望者の全員が育休を取得している企業です。
それを可能にしている理由は何なのか。
今回、プロダクトマネージャーという立場で、4ヶ月の育休を取得した宮前に、育休取得の経験を含めて聞きました。
はじめての育休の取得、メンバーはお祝いの言葉とともに、すんなりと受け入れてくれた
ーー第一子の時は育休を取得しなかった宮前さんが、第二子で育休を取得した理由は何ですか?
第一子のときの反省を踏まえて、第二子をもし授かったら育休をとりたいと思っていたからです。
第一子が生まれた2014年当時は、社会的にもまだ男性が育休取得する風潮ではありませんでした。上場前年で仕事も忙しく、妻の実家の近くに住んでいたので、家族のサポートも得やすかった事もあり、自分の中に育休を取得する発想がなかったんです。
でも、その時の反省があって。貴重な赤ちゃんの時期に触れ合う時間が少なかったことを後悔したんです。
だから昨年、第二子を授かったとわかったときには、育休を取得しようと思いました。今は、実家から離れたところに引っ越していたので、周囲のサポートが得づらい状況でしたし。
ーー育休取得にあたって、どのように調整していきましたか。
心がけたことは、早めの意思決定と情報共有です。
妻の妊娠がわかった時点で、今回は育休を取ろうとほぼ決めていました。とはいえ、不安もありました。事業責任者だったので、自分が2ヶ月いなくてもチームや事業が回るのか、と。
でも「取得する」と決めたら、責任者不在でもメンバーが意思決定して事業を運営していけるように準備をするのみです。
上長や関係メンバーに伝える前から、引き継ぎの段取りを考えていました。
――「早めの情報共有」ですが、育休取得はいつ頃伝えましたか? その時のメンバーの反応も教えてください。
妻が安定期に入ってすぐに、まず上長に伝えて、すぐに関係しているメンバーに伝えました。
上長もメンバーも「おめでとう! わかりました。どのくらいとります?」と、すんなり受け入れて、祝福してくれてありがたかったです。
ーー育休期間はどのように考えて設定されましたか?
第1子の時に、2か月ぐらいで妻の体調が回復し、生活のリズムがつかめていたので「2か月」と申請していました。ただ、今回は妻の体調が思わしくなく、とても復帰できる状態ではなかったんです。育休中に更に2か月延長させてもらうことになりました。
体重5キロ減、髪は伸びっぱなしの、激務な育休期間
ーー実際に、育休をとってみていかがでしたか?
ひと息つく間もなかったです。5キロも痩せたんですよ。髪を切りに行く時間もなくて、育休中に復帰に向けた人事面談があったのですが、驚かれましたね(苦笑)。
妻の体調が悪かったこともあって、ほぼワンオペだったんです。何か「コレが大変」というよりも、生活の集合体で大変なんです。
第1子のお弁当作り、3食の準備、掃除、洗濯、寝かしつけ。特に寝かしつけは毎回30分ぐらいかかりますし、それが3時間おき。立ってゆらゆらしないと寝てくれないので、腱鞘炎になりかけました。たぶん、これで痩せたんじゃないですかね。
ーー職場への復帰前はどのようなことを考えていましたか?
今まで、4か月も仕事をしなかったことがなかったので、ちゃんと復帰できるかが不安でした。育休中は頭で考えることよりも、感覚やフィジカルな部分を使ってずっと生活していたので、論理的な思考ができなくなっていたんです。
復帰後、仕事に必要な頭の使い方をすると、すぐに疲れてしまったり、忘れっぽくもなっていて、もどかしさを感じました。結局元の状態に戻るまで、1か月くらいはかかりました。
ーー復帰後、生活や考え方に変化はありましたか?
育休を機に、より家事をするようになりました。寝かしつけ以外は育休中と変わらないです。家事と育児の時間を確保するためにも、仕事でもプライベートでも今まで以上に「何をすべきか」優先順位をつけて、絞るようになりました。
ただ、学習時間の捻出には苦労しています。自分の時間が1時間しかないので、読みたい本はたくさんあるのですが、これも優先付けしています。もともと「使える時間で最大限に成果につなげよう」という考えではあったのですが、あらためて再認識しています。
希望者全員が育休取得、なぜこんなにもピクスタは育休がとりやすいのか
ーー振り返ってみて、ピクスタは育児休暇を取得しやすいと思いますか?
ニュースや子どもの保護者会で話をした時の反応で感じる比較にはなりますが、圧倒的に取得しやすいと思います。
ーーその理由はなぜだと思いますか?
「PIXTAの事業と収益が安定していること」と、「役職を問わず、男女ともに育休を取得する人が多いこと」だと思います。
社内にある「育休は特別なことではないという雰囲気」が取得のしやすさに繋がっていると思います。
チームメンバーの寛容さも大きいです。育休中は予期せぬ延長もあり、メンバーに負担をかけることになってしまいましたが、優しく受け止めてくれてありがたかったです。ピクスタには育児関係なく長期休暇をとるメンバーもいて、「お互い様」という考え方があるのかもしれません。
ーー「お互い様」が浸透している要因はなんだと思いますか?
代表がそういう考え方だから、ですかね(笑)。
創業の頃から、互いにフォローし合うのが当たり前というか。
当時は、やらなければならないことはたくさんあっても、リソースは限られているから、必然的に、みんなが兼務の状態でした。経験や実力が足りていなくても「やったことないけど、助け合ってなんとかしよう」と前に進めてきました。それが文化になって、文化に共感するメンバーが集まって、今の寛容な社風が醸成されているんだと思います。
育休期間がなかったら、今こうして働くことができなかったかもしれない
ーー改めて振り返って、率直に、育児休暇を取得してよかったですか?
よかったです。
もし育休を取得できていなかったら、妻の体調もあり、生活の基盤が整えられなかったと思います。もしかしたら、普通に働くことができなかったかもしれません。
立場上、今後メンバーから育休取得の相談をうけることもあると思いますが、その時は「3ヶ月はとった方がいいよ」とアドバイスしながら快く送り出そうと思っています。
ーー今、助言もいただきましたが、最後に今後、育児休暇取得を考える人達に、改めてアドバイスをお願いします。
「自分のプライベートな事情で、周囲に負担をかけて数か月間休む」ということに抵抗を感じるかもしれません。
でも、育休で新しい生活のための基盤や家族との良好な関係を構築した方が、長期的にみて自分にとっても会社にとっても幸せになれると思います。プライベートに気がかりを残すよりも、仕事に集中できますからね。
家族と仕事どちらも大切にするバランスの取り方を学べる育休は、将来の投資です。
人それぞれに事情はあると思いますが、育休を取れる環境にある方でしたら、ぜひ育休をとられることをオススメします。
ーーありがとうございました。
(執筆:ピクスタ+編集部)