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不確実な現代におけるビジネスリーダーのあるべき姿『問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」』

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 ピクスタのブレーンである経営陣やリーダーたちが影響を受けた本を紹介するコーナー。何を学び、何を得て現在に至るのか。

 出会った本は、その人の思考の一端を垣間見ることができます。

 今回、紹介するのは、執行役員 CTO 兼 開発部長の後藤よりこの一冊です。

問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」

問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」

  • 作者:齋藤 嘉則
  • 発売日: 2001/12/01
  • メディア: 単行本

 

どんな本か

 戦略コンサルタントの齋藤嘉則氏による著作で、同氏の『問題解決プロフェッショナル「思考と技術」』の続編となる本。

 問題解決について書かれた本は数多くありますが、その前段階であり(実は最も重要な)問題発見について書かれている点が特徴です。何らかの領域やチームを率いるビジネスリーダー、あるいはそのような役割を担うことを目指している方におすすめの一冊です。

本書との出会い

 ピクスタに入社して2年ほど経ったある日、私は「技術推進室」という新設チームのリーダーを任されることになりました。このチームは、ピクスタが運営する各サービスの開発チームからは独立した存在で、開発者の生産性を向上することを目的として発足しました。

 技術推進室はその性質上、待っていればやることが降ってくるようなチームではありません。また、サービスの機能開発に直接関与しないこともあって、リーダーである私はチームの存在意義を問われる期間が続きました(直接言及はされることはなかったものの、そういった緊張感がありました)。

 こうした中で、何か参考になるようなものはないかとインターネットを検索しているときに出会ったのが本書です。

問題とは何か

 そもそも、問題とは何でしょうか。

 本書の冒頭で著者は、Herbert A. Simon氏の著作「意思決定の科学」における定義を引用しながら、簡潔にこう述べています。

問題とは一言で言うと、「目標(あるべき姿)と現状とのギャップ」ということになる

――引用:『問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」』P.16より

 私は、本書を読むよりも前に別の文脈で同じ定義を見かけたことがあり、ここでも同じ定義が出てきたことを当時は不思議に思いました。今考えると、これはロジカルシンキングやそれに類するものを勉強すると高い確率で出会う定義なので、特定のクラスタでは共通の認識になっている、という理解をしています。

問題発見ができない理由

 続いて著者は、問題発見の質が最終的な解決策の方向性や質を大きく規定すると説きます。そして、 的確な問題発見ができない理由は次の4つのパターンに整理できると主張しています。

①問題を定義する前提となる「あるべき姿」を、的確に描けない
②「現状」の認識・分析力が低く、正確な把握ができていない
③「ギャップ」の構造を解明して、問題の本質を具体化・優先順位づけすることができない
④実行可能な「解決策」から逆順で短絡的に問題をとらえるために、拡がりを見失う

――引用:『問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」』P.23より

 

 初めてこの一節を読んだとき、理由が"モレなくダブりなく"分解されていること、分解された各パターンが精緻に言語化されていることにとても感動したのを覚えています。以降、自身のために定期的に読み返しているだけでなく、リーダーの育成にも活用しています。後者に関しては、④→②→③→①の順に対象のメンバーの意識・行動を抑える・伸ばしていくとよいのではないかと考えています。

 自戒をこめて話すと、私のようなソフトウェアエンジニアをはじめとした専門職に就いている方は、前述の④に対して特に注意が必要です。なぜなら、無意識に「自分の手持ちのスキル・知識で解決できることが問題である」という誤った認識をしてしまう場合が見られるからです。

 私の経験の範囲では、問題発見の段階では解決策のことを意図的に考えないようにすることで、当初は思いもよらなかった問題の本質にたどり着けたことが多くありました。この場合、対応する解決策もまた自分の持っていないスキル・知識を必要とするものになることがほとんどでした。このようなこともあって、④のような意識・行動を抑えられるか否かが、問題発見能力向上における分水嶺だと思っています。

問題発見の種類

 私が本書で最も好きなところは、問題発見を2種類に分けて論じていることです。

 著者はこの2つを「オペレーション的問題発見」と「戦略的問題発見」と呼んでいます。両者の違いは、問題を構成する「あるべき姿」が与えらえるか否かです。

「あるべき姿」が決まっている、つまり所与の場合の問題発見を「オペレーション的問題発見」とすると、「あるべき姿」で構想することで問題を発見するパターンは「戦略的問題発見」と呼ぶことができる。

――引用:『問題発見プロフェッショナル―「構想力と分析力」』P.61より

 不確実性の高い現代社会においては、あるべき姿自体が変化しやすくなっています。そのため、これを固定したままオペレーション的問題発見を続けていると、気づかないうちに誤った問題発見のもとに解決策を実行してしまうでしょう。

 このような事態を避けるためにも、何らかの領域やチームを率いるビジネスリーダーであれば、戦略的問題発見の能力を身につける必要があると感じています。私自身も、求められる役割に相応しい水準の能力を身に着けるため、日々努力しているところです。

本書の読み方

 本書は3部構成になっており、第1部と第2部では前述したような問題発見に関する概念的な話と、著者が考案したあるべき姿を構想するためのフレームワークについて書かれています。そして、第3部では問題を構成する「現状」や問題の構造を分析するための手法について書かれています。

 ここで紹介される手法は、読者の置かれた状況によっては適用できるものとそうでないものがあるでしょう。そのため、適宜取捨選択して読むことをおすすめします。

 例えば、ソフトウェアエンジニアの方が本書を手に取った場合、第3部は次の節を中心に読むと良いでしょう。

  • 3-2: 分析から導かれる意味合いを必ず引き出す
  • 3-3: 定量分析と定性分析を使い分ける
  • 4-1: MECE
  • 5-1: ロジック
  • 5-2: コーザリティ分析

 

後藤 優一(Yuichi Goto)

執行役員 CTO 兼 開発部長

1990年生まれ。
東京工業大学大学院在学中にピクスタ株式会社にアルバイト入社。 2015年に同大学院を卒業後、ソフトウェアエンジニアとして正社員入社。開発プロセスの改善や開発基盤の整備に従事。 2017年より開発部技術推進室長を経て、2020年1月より執行役員 CTO 兼 開発部長に就任。 執行役員として次の主力事業の開発に注力しながら、開発部長としてより良いエンジニアリング組織づくりに取り組んでいる。

 

(執筆:執行役員 CTO 兼 開発部長 後藤優一 撮影:コンテンツ部 クリエイティブディレクター 矢島 聖也)