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ピクスタは経済危機に強いのか? 弱いのか?

 企業力の強さが問われる時代がきています。

 数年ごとに日本、または世界で大きな災害や経済危機が起きており、私たちを取り巻く環境も飛躍的なスピードで変わり続けています。そんななか、企業の強さやその変革がこれまで以上に求められるようになりました。

 今回は、現在も続く新型コロナの影響や過去の経済危機時の影響を皮切りに、企業としてのピクスタの強さや弱さ、延いては未来の日本社会においてピクスタがどう生き残ってゆけるかについて、代表の古俣のインタビューをお届けしていきます。

新型コロナを受けて

ーー恐れていた第二波がきているとの見方もあります。5月にはブログで新型コロナの事業への影響についての記事公開もありましたが、その後の変化も含めて所感を教えてください。

 決算発表の内容にも盛り込みましたが、3月ごろに立てた事業への影響予測とほぼ相違なく推移しています。その予測とは、4月から5月にかけてが最も売り上げに影響を受ける時期で、そこから多少上下しながら徐々に回復するのではないかというものです。当初から1〜2割ぐらいの売り上げの下がり幅を想定しており、実際ほぼその通りに推移しているため大きな想定外の影響はありません。

 5月下旬に緊急事態宣言が明け、6月は順調に回復傾向にありました。昨年同月と比べてもほぼ同程度となり、マイナスはありません。年初の計画では昨対比プラスで予定していたので、その点で見ると期待には届いていませんが。7月から下半期に入りましたが、今後もさほど大きな影響は受けないという見立てを持っています。

ーーこの状況下でも甚大な影響は受けなかったというわけですね。経営難に見舞われている企業も多いなか、限定的な影響にとどめることができた要因はどこにあるのでしょうか。

 大きな減収にならなかった要因はいくつかありますが、例えばPIXTA事業だと、ちょうど昨年ごろから単品販売に加えて、定額制での購入プランを強化していたことがあげられますね。サブスクリプションモデルの収益基盤の強さが功を奏しました。

 また経営状況としては、ピクスタでは資産に占めるキャッシュ(現金)の割合が比較的高かったため、危機的状況を迎えるには至りませんでした。今回のような経済危機の際に企業経営において重要なのは、いかに現金を持っているかという点です。その点、当社ではここ数年で盤石な財務基盤を築いてきたため、経営に不安はありません。

 このキャッシュ比率が高かったというのは、実は少し幸運的な側面もあります。2015年に東証マザーズに上場したあと、当社はかなり積極的に買収や新規事業への投資を行なってきました。その後、投資を行なったそれらの事業の成長や既存事業のサービス改善を強化することとし、2018年ごろからは新規投資よりも立ち上げた事業を育てる方にシフトしたのです。そのためキャッシュを保持できていたタイミングだったというわけです。

参考:ピクスタ株式会社 IRライブラリ

ピクスタのこれまで

ーー今回の新型コロナ以外にも、創業以来いろいろな経済危機を経験してきました。例えば2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災があります。まずはリーマンショック時、ピクスタにはどのような影響があったのでしょうか。

 リーマンショックについては先日ブログにも書いたんですが、ピクスタのターニングポイントの一つでしたね。

 創業3年目ということもあり、まだサービスも軌道に乗る前で赤字の時代でした。元々の規模が小さいから、多少売り上げに影響があったとしても大差はなく、業績への直接的な影響はあまり実感がありませんでしたね(笑)。

 大きかったのは、金融機能が麻痺し、当社も資金調達に奔走したことです。苦労も多く、いろいろと苦心してなんとか資金繰りを行うことができた経緯はブログを見てもらえればと思いますが、その後のサービスの成長も忘れがたいところです。

 リーマンショックから半年ほどが経った2009年3月ごろ、売り上げが一気に伸びてPIXTAは軌道に乗ることができました。

ーー経済危機からわずか半年で収益が急増した背景はなんだったんですか?

 リーマンショックを機に、多くのクリエイターさんがPIXTAへ画像の投稿をしてくれるようになったこと、またPIXTAの提供していた低価格帯の素材にユーザーのニーズが多く集まり始めたことです。

 2008年、日本でも多くの企業が経営難に陥り、倒産や人員整理を余儀なくされていました。そうなると当然、個人の収入も不安定になります。その結果、フリーランスや副業としての働き方を模索する人が増えたのです。PIXTAのようなストック型サービスでは素材の点数が強みの一つになりますが、この時に投稿素材数が一気に増えたことが事業の立ち上がりにも大きく影響しました。

 またユーザーニーズとしても、当時主流だった撮り下ろしから、より安価なストック素材に変化することとなりました。PIXTAの素材は広告利用で購入されることが多いのですが、ほぼ全業界で収益が停滞したタイミングでしたから、必然的に各企業が広告にかけられる費用も少なくなります。そこでよりコストを抑えて広告活動を行うために、ストック素材のニーズが高まったのです。

 その結果、売り上げが伸び、そこからサービス自体を軌道に乗せることができました。

ーークリエイターサイドとユーザーサイド、双方のニーズを、PIXTAというサービスがうまく架け橋になって繋ぐことができたんですね。  その2年後に今度は東日本大震災がありましたが、そちらの影響はどのようなものだったのでしょうか。

 当時ピクスタのオフィスがあった建物も揺れて棚が倒れるなどし、近くの神社に避難したことを覚えています。このときは事業が軌道に乗っていたこともあり、リーマンショック時よりもわかりやすく業績への影響がありました。

 3月の震災のあと、4〜7月はそれまでと比べて半分ほどまで売り上げが落ち込みました。ただ、リーマンショックの際と違うのは、経営難で広告費が削られるというよりも、全国的な自粛傾向により一時的に広告がストップしたということです。当時テレビをつけても、公共広告機構のCMばかりが流れていた記憶があります。

 この自粛傾向はユーザーサイドだけではなく、クリエイターサイドにも広がっていて、あの時期は新規投稿の伸びも少し減速していました。

 ただ、自粛傾向は程なくして徐々に緩和され、反対に経済を回さなければという見方も増える中で7月ごろには売り上げも戻り始め、秋口にはほぼ以前の水準まで戻っていました。

ーー比較的影響は少なかったんですね。今回の新型コロナも含め、それぞれの時の心境の違いはどうですか。

 3度の危機のうち、一番辛かったのはやはりリーマンショックの時ですね。ただでさえ赤字なのに追い討ちのように起きた危機だったので、心理的負担も大きくありました。

 震災の時は業績への影響というよりも、災害自体のインパクトが強く残っています。僕自身、通勤もままならないような物理的な影響もあり、そういった意味での不安は大きかったですね。

 そう考えると、今回が一番影響も不安も少なく、事態に対する予測や計算ができている状態です。もちろん株式市場も大きく動きましたし、日々の生活にも変容が生まれましたが、会社としても個人としてもさほど大きな揺らぎなく運営することができています。

あまねく存在する需要に応え続ける

ーーこうして3度目の経済危機を乗り越えようとしていますが、その勝因はどんなところにあるのでしょうか?

 いろいろな要因はありますが、特に今回や震災のときは、事業も組織もオンラインをベースにしたものであったことが大きな強みになりました。店舗も工場も持たないオンライン事業で、商材そのものもオンライン上で展開しているのがピクスタの特徴です。それはつまり、立地や天災など、物理的な外部要因に大きく左右されにくいということだからです。

 このオンラインベースの事業というのは僕自身のこだわりで、2005年の創業当時からオンラインビジネスをやろうと決めていました。災害への強みというよりは、Webという世界の中にはまだまだチャンスがいくらでも眠っていると考えていたからですが、結果としてそれがアドバンテージにもなりました。

ーー立地に左右されない、というところでは2月以降、全社的な在宅勤務も始まりましたね。

 実は在宅勤務については、震災の経験から繋がっているんです。当時も電車が動かなくなって通勤がままならなくなり、一時的に在宅勤務をせざるを得ない環境になりました。

 当時は比較的すぐ復旧できたこともあって、制度としての本格導入までは至りませんでしたが、組織構造をオンライン化するきっかけになりました。その頃から、業務をリモートやオンライン上で回していけるような仕組みづくりを少しずつ始めたんです。

 それからしばらくして海外展開も始め、テレビ会議など、コミュニケーションも積極的にオンライン化するようになりました。これらの変化が、今回の新型コロナ禍でもスピーディな対応を可能にしてくれましたね。

ーー過去の経験が今につながっているんですね。反対に、弱みはあるんでしょうか?

 今回に限って言えば、fotowaのようにオフラインも含んだサービスは比較的影響を受けやすく、実際に緊急事態宣言中は撮影予約のキャンセルも相次ぎました。ただ、それが本質的に弱みであるかとそういうわけではないと思っています。

 僕たちが満たそうとしている需要は、PIXTAにせよfotowaにせよその他のサービスにせよ、普遍的なものです。不況の煽りを受ければ多少売り上げが落ちる時もある。けれど、この需要は決して0にはなりません。

 「才能をつなぎ、世界をポジティブにする」、僕たちが掲げるこの理念は、時代やトレンドに左右されるようなものではなく、人の心の中に根強くありつづけるものを対象としているからです。

 業種を問わず、地域を問わず、あまねく存在する需要に広く応えるサービスであるからこそ、根本的な需要がなくなることはないと信じています。

ピクスタの未来地図

ーー今後、日本経済も大きな変容を余儀なくされることになると思います。ピクスタにとってはどのような影響があるのでしょうか。

 まず、日本だけではなく世の中の構造として今後はより一層、経済活動に占めるオンラインの比率が高まっていくだろうと考えています。そしてこの流れが主流になるにつれ、ピクスタの強みはより活かしやすくなっていくと思います。

 その一端として例えば、今回の新型コロナをきっかけにクリエイターさんの投稿が増えていることが挙げられます。それも、アマチュアの方だけではなく、プロカメラマンの投稿や登録が増えているのです。これはつまり、リアルベースでのカメラマンの商活動が縮小する中で、オンラインへの移行が加速しているということです。

 こういうことがおそらく様々な業界で起きていて、今後も増えていくのではないでしょうか。ピクスタも含めた多くの企業が、組織のあり方や働き方について見直すこととなった機会でもありますしね。

 そういった背景を踏まえると、元々オンライン事業を行なっているピクスタとしては、ビジネスチャンスがこれまで以上に増えると考えています。

ーーピクスタにとってはビジネスモデルを活かしやすい変容というわけですね。  さて、2016年に立ち上げたfotowaもある程度軌道に乗り、次の戦略検討もあったのではないかと思いますが、新型コロナを経て今後の経営戦略に変化はありましたか?

 全く影響がなかったとは言えませんが、中長期の戦略が大きく変わったというほどではないですね。ただ、元々描いていた青写真に対し、時期的な見直しや、意思決定のハードル調整を行うことにはなるかもしれません。いますぐにどう変更するというよりは、これまで以上に世の中の動きに敏感でいる必要があるということです。

 しかしその一方で、新規事業の立ち上げにはこれまで同様、積極的でありたいと思ってもいます。複数の収益基盤を持つことの大切さを今回改めて感じたためです。PIXTAは比較的広い業種に向けたサービスではありますが、それでもひとつの事業や需要に頼った収益構造だと、一定のリスクは存在してしまいますよね。

 今年は、新型コロナがあったとはいえ、PIXTAオンデマンドPIXTAエディターなど新たなサービスの立ち上げも行えました。もちろん新規事業を立ち上げればそれでいいというわけではありませんが、新しいことはやってみなければわからないという側面もあります。いい意味でトライアンドエラーを繰り返すことのできる企業であり続けたいです。

 だからこそこれからも、理念にもとづきながら、現在の延長だけではなく、新たなニーズに積極的にアプローチできるような事業展開を目指していきます。

ーーありがとうございました!

終わりに

 今後も不確実性の増す時代です。未来を見通すことは誰にもできませんが、今回のような不測の事態でもそれを追い風にできる強さを、これからも持ち続けながら邁進していきます。

 ピクスタでは仲間を募集しています。気になる職種がある方はぜひエントリーしてみてください。


(執筆:コーポレート本部 戦略人事部 伊東 祐美 写真:fotowaフォトグラファー はやしなおゆき氏、コンテンツ部 クリエイティブディレクター 矢島 聖也)

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