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新規事業への挑戦、あたためてきたキャスティング事業にかける想い

 2022年7月末に、新規事業「PIXTAキャスティング」が誕生しました。

 これは、2013年頃に人物撮影に取り組みたいPIXTAクリエイターの支援策として展開した「ストックフォト撮影が可能なモデル一覧からクリエイター自身が撮影オファーを出せる非営利の機能」を、広告などの撮影にモデルを起用したい法人を対象にした「キャスティングサービス」として事業化させたものでした。

 立ち上げたのは、PIXTA事業本部 カスタマーサクセス部 部長 白石と、コンテンツ部 モデル担当の長岡の2名。 誕生の背景にあったのは、2019年6月からスタートしたピクスタの『新規事業トライアル制度』の存在と事業にかける熱い想いでした。

 異なる立場にあったふたりが、いかにして事業を立ち上げたのか。その軌跡をたどります。

白石 哲也(Tetsuya Shiraishi)
PIXTA事業本部 カスタマーサクセス部 部長
兼 PIXTAキャスティング運営

 東京造形大学比較造形学部卒業後、イタリアのアカデミア・イタリアーナでディスプレイデザインを学ぶ。帰国後、出版社でのエディトリアルデザイナーを経て、広告制作会社でホテル、旅行業界の広告ディレクションや撮影ディレクション業務を担当。 2012年ピクスタ株式会社に入社、コンテンツ部を経て、2019年よりPIXTA事業本部カスタマーサクセス部部長。

長岡 聖子(Seiko Nagaoka)
PIXTA事業本部 コンテンツ部 モデル担当
兼 PIXTAキャスティング運営
 
 出版社で編集者として10年勤務。ファッション雑誌を中心に、書籍やムック本の編集を担当。2016年ピクスタ株式会社に入社。PIXTA事業本部コンテンツ部のディレクター職を経て、2020年よりモデル担当。

新規事業に挑戦した理由は「モデル」への想い

── ふたりとも日々の業務がある中で、よく新規事業トライアル制度に応募しましたね。もともと「いつか新規事業を立ち上げたい」という気持ちをお持ちだったのでしょうか?

白石: チャンスがあれば挑戦したいなとは思っていました。2019年に募集がかかったトライアル制度の前身「派生サービス案公募」が出た時も応募はしていたんです。ただ、その時は採用されなかったんですね(苦笑)。それで、次も公募があれば出したいと思って、以前出したアイデアとは別で粛々と温めていたモデルキャスティング事業のアイデアを出すことにしました。

 もともと「MCS(モデルキャスティングシステム)」は、現部署に異動前、コンテンツ部にいた当時に、PIXTAクリエイターの人物撮影を支援するために作ったものなんです。当時から、このままPIXTAクリエイターに限定した機能で終わらせるのはもったいないなと思っていて、「いつか多くの人が使えるサービスにしたい」とは思っていました。

 それに、当時、撮影をご一緒したシニアモデルが言っていた「モデルの仕事があるから、生きがいを持って生きていける」という言葉が忘れられなくて。

 こういう人たちがもっと活躍していくべきだし、応援したいと思ったんです。コロナ禍で、撮影の仕事が減ってしまったモデルも多かったですし、オンラインでモデルを起用したい人とモデル自身をつなげば活躍の場をもっと広げられるんじゃないかと、新規事業トライアル制度の募集をきっかけに、やりたい気持ちが強くなって企画書を出すことにしたんです。

 とはいえ、これをやろうと思うと、現在コンテンツ部でMCSを担当している長岡さんの協力が不可欠なので、事前に相談したんですよ。

長岡: わたしはわたしで、実は似たようなことを考えていたんです。MCSにはもっと活躍できるはずのモデルさんたちがたくさん眠っていることに課題感を持っていたので。

 本当は、わたしも派生サービス案の公募が社内で行われた当初、応募しようと思っていたんです。でも応募条件をみたら、提出しないといけない課題がたくさんあって「これは重いなぁ……」って思ってしまって、提案しなかったんです(笑)。

 でも、たくさんのモデルさんたちから話を聞いたり日々の業務の中で、やっぱりモデルさんたちの活躍の場をもっと広げてあげたいという気持ちをもやもやと持ち続けていたんです。

 そしたら今回新たにリスタートした「新規事業トライアル制度」は、応募条件がぐっとカジュアルダウンされたので「これなら、わたしにもできるかも!」と思って応募したんです。

── ということは、ふたりで相談して企画を出したのではなく、それぞれが似た事業アイデアを別々に提出したということですか?

白石: 別々でしたね。似てはいたけれど、やっぱり違う部分はありました。

長岡: 白石さんは、クライアント企業にとっても利用しやすいような、これまでのピクスタのプラットフォーム事業に共通した「一律料金」を軸にしていて、わたしはモデルが直接クライアント企業とやりとりできるカジュアルな設計を思い描いていたので、別々で出してみることにしました。

 とはいえ、やはり似ていたし、内田さん(役員兼コンテンツ部 部長)も、似たような構想を持っていたこともあって、3人で一緒に取り組んでいくことになったんです。

── そこから、アイデアを統合していくのは、意見がぶつかったり大変な面もありそうですが、発案からどのくらいでリリースに至ったんですか?

白石: 昨年の10月頃から3人で練っていって、トライアルでランディングページを公開したのが4月なので、約7ヶ月です。サービスの正式リリースは、そこから3ヶ月後でした。

長岡: 意見がぶつかって困るということはなかったです。「ピクスタだからできることはなにか、どうしたらより良くなるか」を話し合う中で、現在のサービス内容に固めていきました。

白石: 幸運なことに、早い段階でPIXTAオンデマンドやSnapmartにクライアント企業を紹介してもらって、ヒアリングができたんです。早々に顧客ニーズをつかめたことは、スピード感を持ってできた要因だと思います。

長岡: モデルさんにも12月頃から、どういうサービスなら使いたくなるのか、どういう仕事を受けたいか、既存サービスの良い点や悪い点などをヒアリングして、モデルが抱えている課題点も確認できたので、わたしたちがどうあるべきかも、あまり悩まず決めていけました。

PIXTAキャスティング

走り出した「PIXTAキャスティング」、強みを活かし嬉しい悲鳴に課題も

── では、現在「PIXTAキャスティング」がスタートしていかがですか?

白石: ありがたいことに、キャスティングの依頼は途切れずにいただいています。「PIXTAキャスティング」は新規事業としては環境的にすごく恵まれていると思うんです。

 たとえば、キャスティングを依頼してくださるクライアント企業がPIXTAのユーザーで「すでにPIXTAの素材を使ってABテストをした結果、コンバージョンが良かったこのモデルを紹介してほしい」という依頼があったりします。結果を踏まえた上でモデルを起用し、自社の商品や施設と撮り下ろしたいというニーズに応えられるのは、僕らの強みですね。

長岡: 他社のキャスティングサービスと違って、PIXTAにモデルの素材がたくさんあって、このモデルを起用するとどんな写真が撮影できるのか、予めイメージがわかる点も強みのひとつですよね。PIXTA素材の流通量も多いので、素材のさまざまな使用事例を通じたイメージも湧きやすい。それがオファーのしやすさにつながっているんだと思います。

 リピーターになってくれているクライアント企業もいて、ありがたいです。

 モデルさんからも「ぜひPIXTAキャスティングに登録したい」という希望者も増えてきています。

── 滑り出しは順調のようですね! とはいえ、ここまで苦労もたくさんあったことと思います。あえて1番つらかった時期をあげるとしたら、いつでしたか?

長岡: 今ですかね(笑)。 ありがたいことに、企業さんからのオファーはいただいていて、モデルさんも増えているんですが、地方での撮影で時々ピンポイントでモデルがいない! という時があります。そういう時は精神的に焦りますね。

 なんとか、あの手この手でオファーには応えていますが「モデルの拡充」は目下の課題です。

 とはいえ闇雲に増やすだけ増やして「仕事がある状態」を維持できないのは申し訳ないので、ちゃんとモデルさんたちにお仕事を紹介できるようにすることへのプレッシャーもあります。

白石: 事業として最優先するのは「安心・安全なお仕事をモデルさんに提供すること」です。

 PIXTAがちゃんと精査して、モデルさんが嫌な思いをせずに仕事ができるようにすることを大事にしたい。それが、競争優位性にもつながると思っています。

── なるほど。そういう白石さんは、辛い時期はありましたか?

白石: いや、ずっと辛いですね(苦笑)。事業が進むにつれて、いろんな課題が出てくるんですよ。モデルの拡充もしないといけないし、対応工数も効率化しないと、将来スケール化ができません。撮影案件が増えるほどに、整理しないといけないことや考えていかなければならないことも増えていくんですよ(笑)。

長岡: 湧き出る泉みたいですよね(笑)。

挑戦してよかった! 夢を見て、周囲に支えられる感謝と喜び

── どう考えても兼業で新規事業をやるのは、大変だと思うんです! 新規事業のアイデアが仮に浮かんだとして、日々の業務と天秤にかけた時に「できるかな、そんな時間あるかな」って躊躇しそうなところ、なぜ挑戦してみようって思えたんでしょうか?

白石: 応募当初は、今の大変さを想定していなかったというか(笑)。むしろ、夢をみていられたから応募できたんだと思います。長年、MCSへの気持ちも、モデルさんたちにもっと活躍の機会を提供したいという想いも抱えてきて、それを形にできる機会がある。その夢の実現が原動力です。

長岡: そうそう。良くも悪くも深く考えないことです(笑)。勢いは大事ですよね。

── なるほど(笑)。新規事業はハードルが高い印象もありますが、サポート体制はいかがでしたか?

白石: 最初から、近しい役員が入ってくれるので心強いです。何しろ何がわからないのかがわからない状態なので、何が必要で、どんな確認が必要なのか、誰に相談すべきなのかは内田さんに聞きながらでしたね。

 それで最初は、恐る恐る法務部に相談したり(笑)。

長岡: 恐る恐る、経理財務部に相談したり(笑)。

白石: ね(笑)。でも、みんな快く協力してくれるんですよ。会社の雰囲気として恵まれているなと思います。すごく前向きに協力してくれるので。

 ピクスタではすでに、fotowaやPIXTAオンデマンドが立ち上がっているので、それぞれに「どうやっているの?」とか「契約書見せて」とか「発注する時はどうやってる?」とか都度聞いて回っていたんですが、みんな温かく教えてくれます。結構うざいと思うんですけど、みんな優しいですよね。

長岡: ありがたいです、本当に。

── トライしてみて良かったと思いますか?

白石: そうですね。大変さはありますけれど、やっぱりPIXTAキャスティングを通じて撮影した写真が実際にクライアント企業の広告になっているのをみるのは、すごく達成感があります。

長岡: わたしも、今までお声がけしてきたモデルに撮影のオファーをした時に「待ってました!」みたいなリアクションを貰うと「やってよかった」と思いますし、嬉しいです。

 モデルにとって、PIXTAクリエイターからリクエストをもらうことも、指名される喜びがありますが、企業からの指名はまた別の、たとえばその企業・商品を表現するのに最適だと選ばれた自己肯定感や、その企業・商品の魅力を自分が表現するやりがいがあります。

 活躍の幅を広げられていると思うので、最大限期待に応えていきたいです。

白石: それに、やっぱり事業を作るのは楽しいです。入社した時からPIXTAというサービスは存在していて、10を100にしていくフェーズでずっと関わっていますが、新規事業は0を1にしていくことで、全然違います。

 10を100にしていくフェーズはもうユーザーがいますが、0から1は、まだユーザーがいないので、ユーザーになりえる人が何を求めているのかを探るところからのスタートです。自分の想いだけではユーザーはついて来ませんし、最初の構想と違うことが分かったときには柔軟性も求められるし、総じて「主体的に事業を立ち上げる」という経験ができて、すごく成長したと思います。

長岡: それに、新規事業に挑戦してなかったら、他事業が実際どう動いているのか、わからなかったと思うんです。PIXTAキャスティングがあるから、周囲の人のサポートを受けやすいし、他の事業部との協力も連携もしやすくなって、ちょっとした意見や希望を聞きやすくなったように感じます。社内の理解も深まりましたしね。

これからこそ勝負! 今後の事業と個人のビジョンとは

── 成長できたというお話もありましたが、おふたりの個人的なキャリアビジョンも聞かせてください。

長岡: キャリアビジョンと言うと難しいですが、今のお仕事は「調整力」というスキルが求められています。人を動かす上で調整力は重要なスキルだし、それは信頼の上に成り立つものだと思います。目下は、モデルにもユーザーにも信頼してもらえるような裏方のプロになりたいと思っています。

白石: 僕はマネジメント経験が長いし、今後のキャリア志向としてもマネジメントです。でも「事業を立ち上げた経験があるマネージャー」になれると、自分のキャリアとしては強いんじゃないかなと思います。そもそも新規事業を立ち上げる経験は貴重だし、本来の業務を進めていく上でも、この経験は絶対に将来役に立つと思っています。

── ありがとうございます。最後に、今後のPIXTAキャスティングの展望を教えてください。

白石: 年内から来期上旬ぐらいまでは、目下「モデルの拡充」に力を注ぐ予定です。都市圏は充実していますが、キッズやシニアモデルを含めて全国的にモデルの層を厚くしていくのが急務だと思っています。

 併せて、今後はサイト流入を増やしていく施策もスタートさせていく予定です。

 現在は撮影における人物モデルのキャスティングですが、将来的には、ヘアメイクやスタイリストなど、撮影に関わるすべてをPIXTAキャスティングで依頼できるようなサービスに広げていきたいと思っています。

── おふたりとも、ありがとうございました!

 

(インタビュー・執筆:経営企画部 広報グループ 小林 順子 / 撮影:PIXTA事業本部 コンテンツ部 矢島 聖也)

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